第十一節 犬と戯れる

物思ふこよりの犬もやせかたち――雑俳柳多留・102

尾から縒る小よりの犬の四つ足――雑俳、瀬とり舟
紙縒りという素材では、紙縒り独特の骨組みだけで肉が付かないので、江戸の川柳では上記のように謳われております。
「一本の紙縒りを更に撚り合わせて犬の居四技に擬したる」(江戸技折)にもあるように、紙縒りで作る犬は骨だけで痩せていることの形容とされています。

犬は、太古の昔より人類の友であり、家や童っ子の守護神であり、安産神(お目出度五ヶ月目の戌の日、腹帯をして祝う)とも言われております。
牡犬は外からの守り、牝犬は内への備え、その間に出来た子犬は未来の宝とされ、昔の庶民の平和と繁栄の願いでもありました。そんな犬にまつわるまじないや慣わしを紹介いたします。

紙縒りで犬を作り、火打石でその犬の尾に火をつけました。するとしまいには全部燃え尽きてしまいました。 「これは待ちに待った客が来る」というわけで、ご馳走をこしらえてお迎えをすることにしました。
さらに夫は妻に命じて紙縒りの犬を作らせました。妻は、大きな牡犬1匹、中くらいの牝犬1匹、小さな子犬3匹を家族の人数に合わせて作りました。 翌朝、夫は客が見える玄関の台の上に5匹の犬を並べ、丁重にお迎えしました。
ところが、客の予定が分からず長く滞在しているので、たまりかねた妻は客が河原に行っている間に、そっと客の目に付くところに犬を置き、いつ頃帰るのか伺うことにしました。
客もそれを察してそれとなく暇ごいしたというわけです。

なお、犬を正面に向けているときは「どうぞゆっくりいつまでも長居してください」と言うことのようであり、犬を後ろに向けているときは「今日は都合により用事ができましたので出来るだけお早めにお引取りください」と言う意味のようです。 直接言いにくかったので、犬を使って意思表示をしていたようです。