【ビジネス教育出版社メールマガジン】

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金┃融┃コ┃ラ┃ム┃

【テーマ】
「NISA口座におけるマイナンバー対応について
~9月末に向けて対応は進んでいますか?」

【執筆者】
野村総合研究所 制度戦略研究室長 梅屋真一郎

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 NISA口座のマイナンバー取得の期限まであと2カ月となりました。

 NISA口座のうち、マイナンバー制度が開始される前の
2016年12月末までに開設された口座については、
本年(2017)9月末までに金融機関が顧客からマイナンバーを取得しない場合、
2018年1月以降非課税での買付け・買増しが出来なくなります。

 そのため、お客様から
「せっかくNISAを使って投資信託を買い増ししようとしたのに出来ないなんて」
といったクレームが来るかもしれません。
また、NISAを再度利用するためには改めて手続が必要になるため、
顧客サービスがなっていないといった不満の声が持ち込まれるかもしれません。

 どの金融機関も、NISA口座をお持ちのお客様は
日頃から深いお付き合いがある場合が多いと思います。
折角お客さまにとってメリットの大きいNISA口座を開いて頂いたのに、
その事が逆にお客様との関係に軋轢をもたらしては本末転倒です。

 エレベーターの待ち時間が長いというクレームがきて、
仮にそのエレベーターの速度を速めることができた場合、
もう同じようなクレームは来なくなるのでしょうか。
この問題の本質はエレベーターの速度ではないかもしれません。

 対象となるNISA口座ですが、証券会社以外の金融機関全体で
約400万口座あると言われています。
そのうち対応が終わっていない口座が、まだまだ多いようです。
そのため行政当局等から各金融機関に対して、
NISA口座に関する番号取得状況に関する問い合わせ等も
行われているとのことです。 

 金融機関等の担当者の中には、
「あと2カ月しかないのに、果たして間に合うでしょうか」
「このままでは、多くの口座の対応が終わらないのでは」と
不安に感じている方も多いと思います。

 実際、「お客様にマイナンバー手続を働きかけても中々対応頂けない」
「何度も何度もDMを送ったのですが、なしのつぶてなので手のうちようがない」
という金融機関の担当者のお話をよく聞きます。
果たしてお客様にきちんと対応頂けるのか、
そもそもマイナンバーのような手間のかかる手続を
お客様にきちんと説明して対応していただけるのか、といった不安です。

 実は、野村総合研究所が中小企業から大企業まで
様々な企業に対して行ったアンケートをもとに推計したところ、
従業員であっても個人支払先であってもマイナンバーの届け出が必要な方々は、
企業から連絡をしっかり行えば8割以上の方はマイナンバーを
届け出てくれるという調査結果が出ています。

 同様に、国税庁によると確定申告でも8割以上の方が
マイナンバーを届け出ていると公表しています。

 つまり、お客様に手続の必要性をしっかりと伝えれば、
同程度の対応は可能だということです。
ここにきて、ようやく行政や関連団体からも
NISA口座のマイナンバー取得に関する様々な広報が行われるようになりました。
この機をとらえ、再度お客様にマイナンバーの必要性を訴え、
マイナンバーの取得に取り組んでいただきたいと思います。

<梅屋真一郎 氏  プロフィール>
野村総合研究所 制度戦略研究室長
東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科履修。
現在野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長。
特に番号制度に関しては、企業実務の観点から、関係省庁や関連団体等との
共同検討を多数実施。
新戦略推進専門調査会分科会.マイナンバー等分科会委員等。
主な著書:
これだけは知っておきたい マイナンバーの実務 (日経文庫)
人事・総務のためのマイナンバー実務Q&A (労政時報選書)

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