【ビジネス教育出版社メールマガジン】

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金┃融┃コ┃ラ┃ム┃

【テーマ】
「NISA口座におけるマイナンバー対応について
~残り1カ月に行う事と来年1月からの預貯金付番への準備」

【執筆者】
野村総合研究所 制度戦略研究室長 梅屋真一郎

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『金融機関以外での収集率はおおよそ8~9割』

 前回のメールマガジンでは、
「NISA口座のマイナンバー取得の期限まであと2カ月」
とご説明しましたが、もう8月も終わり。
いよいよあと1カ月でNISA口座取得の期限を迎えます。

 おそらく皆さんの金融機関でも、お客様からのマイナンバー取得の
取り組みが佳境を迎えていると思います。

 先般、金融当局の方々とマイナンバーについて議論した際、
「最近になって急速に各金融機関のギアが上がってきました。
今まで遅れが目立っていた金融機関の中には、この数カ月で一気に
マイナンバーの収集率が上がったところもあります」
といった話がありました。

 もちろん、なかなか収集率が上がらずに苦労されている金融機関も
あると思いますが、残り1か月、より一層ギアを上げて取り組んで
いただきたいと思います。

 先般、筆者の会社では、金融機関以外の民間企業
(従業員5人前後の小規模企業から500人以上の大企業まで300社を対象)
に対して、マイナンバーの収集状況に関するアンケート調査を行いました。
どの企業も従業員はもちろん、個人の支払先からマイナンバーを
届け出ていただく必要があるわけですが、
約7割の企業が全ての対象者からマイナンバーを収集していることが
わかりました。

 それ以外の企業を合わせると、マイナンバーの収集率は
従業員・個人の支払先を問わず、大体9割前後と試算しています。
確定申告でのマイナンバーの記載率も8割を超えているので、
金融機関以外での収集率はおおよそ8~9割に達していると推計されます。

 もちろん本来の制度の趣旨からすれば、
100%の収集率であってしかるべきですが、
制度開始初年度としてはまずまずの状況だと言えると思います。

 こうした金融機関以外の収集率にかんがみれば、
しっかりとした事務体制を持つ金融機関の収集率はどの程度であるべきかが、
見えてくるのではないでしょうか。

『意外に多い通知カードの紛失』

 実際にマイナンバーの収集を行う際、特に注意しなければいけないのは
本人確認の手続きです。
 この手続には、通知カードあるいはマイナンバーカードが
必要になるわけですが、先のアンケート結果から全住民に送付されたはずの
通知カードを紛失した人が意外に多いことがわかりました。

 

実際、一部の対象者からマイナンバーを収集できなかった
企業が挙げる理由で最も多かったのも、
「対象者が通知カード等を紛失。またはどこにあるか分からない」
というものでした。

 

通知カードを紛失した場合は、居住地の自治体窓口に行って、
再発行の手続を行う必要があります。
 残り1カ月と期限が迫っているだけに、通知カードを紛失したお客様には、
なるべく早めに役所窓口で再発行の手続を行うようお願いしましょう。

『預貯金に対する付番に向けた準備が始まる』

 

9月末のNISA口座の取得期限が終わると、今度は来年1月から始まる
預貯金に対する付番に向けた準備が始まります。

 

すでに全国銀国協会がホームページでリーフレットなどの広報資料を
掲載するなど、少しずつですが動きが出てきました。
 残された時間は4ヶ月と決して長くはないので、今後行政・民間が
一体となって積極的に広報活動を展開することが望まれます。

 来年1月からの預貯金付番は、まずは任意での届出となりますが、
付番状況が芳しくない場合は3年後を目途に義務化も視野に入れた
検討を行うと法律の附則に明記されています。
 もし法律に付番の義務化が盛り込まれるようなことになれば、
事務量は膨大なものになるし、全国的に混乱する可能性もあります。

 NISA口座でマイナンバーを取得済みのお客様については、
そのまま番号を預貯金の付番に利用できるといったことも踏まえ、
お客様に対して積極的に預貯金付番について説明することが望まれます。

<梅屋真一郎 氏  プロフィール>
野村総合研究所 制度戦略研究室長
東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科履修。
現在野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長。
特に番号制度に関しては、企業実務の観点から、関係省庁や関連団体等との
共同検討を多数実施。
新戦略推進専門調査会分科会.マイナンバー等分科会委員等。
主な著書:
これだけは知っておきたい マイナンバーの実務 (日経文庫)
人事・総務のためのマイナンバー実務Q&A (労政時報選書)

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